目次
1. 犬や猫の進化的背景と食性
犬の祖先はオオカミ
- 犬は約1万年以上前にオオカミから家畜化されました。オオカミは主に肉食ですが、実際には死肉や植物も多少食べる雑食寄りの肉食動物です。
- そのため犬も、現代のドライフードなどよりは、生肉や生骨、内臓、野菜などを混ぜた多様な食事を自然の中で取っていた歴史があります。
猫は完全肉食動物
- 猫の祖先は砂漠地帯の小型の肉食動物で、狩りで捕まえた小動物や鳥を食べていました。
- 猫は自身でビタミンや必須アミノ酸(特にタウリン)を体内合成できず、これらは主に肉から摂取するため、完全に肉食に特化しています。
- そのため猫にとっては生肉のほうが本来の食事に近く、栄養面でも適しているという考え方があります。
2. 市販ペットフードの普及と問題点
- 20世紀に入ってから、市販のドライフードや缶詰が普及し、飼い主の手間が減ったことで一般的なペット食となりました。
- しかし、製造過程で加熱処理がされるため、栄養素が一部壊れることや、添加物の使用が避けられないこともあります。
- また、原料の質が低い場合もあり、動物によってはアレルギーや消化不良、皮膚トラブルが増えるケースもあります。
3. 生肉食(RAWフード)への注目のきっかけ
1990年代:BARF理論の登場
- オーストラリアの獣医師イアン・ビリングハースト氏が、ペットの健康は「自然に近い食事」が重要だと提唱。
- BARFは「Biologically Appropriate Raw Food(生物学的に適した生食)」の略。自然な形態の肉、骨、内臓、時に野菜や果物を組み合わせた食事です。
- 人間の食生活での「オーガニック志向」や「ナチュラル志向」と並行して、ペットの食事も見直されるようになりました。
飼い主の健康志向の影響
- ペットを単なる「ペット」ではなく「家族」として扱う人が増え、ペットの健康管理や食事に対する意識も高まっています。
- その結果、「市販品よりも安全で質の良いものを与えたい」という思いが生肉食普及の背景となりました。
4. 生肉食のメリットと実際の効果
- 毛並みや毛艶の改善:生肉の脂肪酸やビタミンの影響で皮膚の健康が良くなると報告。
- 消化や排便の改善:加工食品に含まれる人工添加物を避けることで、腸内環境が整い、便臭や量が減るケースもある。
- 活動性の向上や免疫力の向上とされるが、科学的根拠はまだ十分に確立されていません。
ただし、全ての犬猫に同じ効果があるわけではなく、体質や個体差があります。
5. リスクと注意点
食中毒リスク
- 生肉にはサルモネラ菌、大腸菌、カンピロバクターなどの細菌が含まれている可能性があります。これらは犬猫だけでなく人間にも感染リスクがあるため、取り扱いに注意が必要です。
栄養バランスの偏り
- 生肉だけを与えると、カルシウム・ビタミン・ミネラルなどのバランスが崩れ、骨格の発育障害や免疫低下の原因になることも。
- 特に猫はタウリン不足に陥りやすいため、専門的な知識がない場合はサプリメントの併用が必要です。
獣医師との相談が必須
- 安全に与えるためには、獣医師やペット栄養士の指導のもとで食事計画を立てることが重要です。
まとめ
- 犬猫の祖先の食性や自然な食事を再現しようという試みが生肉食普及の大きな理由。
- 加工フードへの不信感やペットの健康志向の高まりが背景にある。
- 生肉食にはメリットもあるが、細菌感染や栄養バランスの問題などリスクもある。
- 安全に与えるには専門家のアドバイスが不可欠。